アユとアシ　-ある母娘の物語-

サイズ（色紙）縦24.3cm×横27.3cm
手書きペン＆パステル画

アユとアシ　-ある母娘の物語-

人が集まり村ができ
辺りは明るくなっていった
人々は戯れ
歌をうたい舞をおどった
全ての物にひとしく愛があり
全ての物にひとしく慈しみがある

この風景はどこからやってくるのだろうか
この情景を創造するものは何か

答えを知る少女があらわれた
少女の瞳の中には弓と剣があった

どこからともなく現われた少女は
祭壇で舞を踊り 神に祈りを捧げた
少女の舞はあらゆる者の心を打ち
人々は感動し涙を流した

アユという名の少女は
闇の中 静止した海のような
静けさを備えた娘であった
その心は
あらゆる掟に縛られず自由であった

少女に嫉妬する１人の人間が現われる
彼女もまた神の使いであった
彼女はアユとは異なる神に仕えていた
その嫉妬はアユに試練をあたえた
アユは静止した夜の海のごとく
静かにすべてを受け容れていった

波乱が起きた
大勢の人がアユを疑い
ただひとりの者がアユを信じた
その者はアユを連れ遠い異国の地へ逃げた

そこは湿った風が吹く街で
自然豊かな場所であった
アユは新しい風景を愛した
そして彼女を連れ出したその男も愛した

やがて子供がが生まれた
その子供はアユに嫉妬をしたあの魂であった
アユは葛藤した
彼女は内なる海にひとり潜った
何という巡り合わせだろうか
あの嫉妬はアユそのものであったのか
くる日もくる日も
アユは自己と向き合い祈りを捧げた

ふいにアユは気づいた
わたしがわたしのために生きてこなかったという事実を
祈りの他にわたしには何ができるのか
アユの中の夜の海が動き出した

その瞬間　アユの娘アシがこう言った

あなたはどうしてここに生まれてきたの
あなたはどうして私の母親なの

アユは答えることができなかった
時はまだ熟していなかった

月日が流れアシは妊娠して子を生んだ
アユは今や老女となっていた

子を生んだアシは子育てに悩んでいた
アシは思った

私はどうしてこの子の母親なのだろうか
なぜ私は生まれてきたのだろうか

この想いが生まれた瞬間
彼女の母親はこの世を去った

深い悲しみにアシは襲われた
アシは神に祈りを捧げた
祈りを捧げることは
アシがこれまで禁じられていたことであった

祈り　祈り　祈り
母親の魂と会うまでアシは祈った
そしてアシはようやく母親の魂と出逢うことになる
娘は母親に訪ねた

なぜ私はこの世界にいるのか
なぜ私はこの子の母親であるのか

呼び出されたアユはこう応えた


汝がために全てをなす
全ては鏡
鏡の中に己を見出し
鏡の中に己を創造する

だが、その鏡を打ち破れば
その中に汝は何を見い出すか

生きよ　汝の魂を全うして子を育てよ
最後まで子を護れ
そしてその娘から
汝の魂の心髄を知るといい


生きるとは何か
共に生きるとは何か
意味などは求めるものでなく
創造だけがただ存在する

今 光の祝福が彼女たちを取り巻いている


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